市民が理解し、賛同する市民運動を、政争の道具にならないことを 2030年、沼津の未来と沼津駅周辺鉄道高架化事業をどう見るのか
(1) 2030年の日本、沼津の社会経済の展望
21世紀の経済社会がどうなるか、先行きが不透明なことに国民は不安を覚えています。2005年は人口の転換期、いよいよ人口減少社会に進んでいきます。「2030年の日本」では、少子高齢化社会でわが国の人口は500万人減少し、経済成長も増税など国民に負担を強いても、せいぜい1%台に留まる低成長だと予測されています。沼津駅鉄道高架化事業は20年以上に及ぶ長期の事業ですが、その完成に時期の20数年先の2030年頃の沼津市や東部地区の人口や土地利用、経済情勢、財政事情、自治体再編成などについて、どう見たらいいでしょうか。長い計画であればあるほど先の見方が、なければなりません。また、先行き不透明な情勢の中で長期的な事業を進めることには、途中に頓挫する危険もあることも考える必要があるでしょう。多分、沼津市の人口が10%以上減少し、人口は都心に回帰し、自動車交通量も増えず、土地利用は縮小し、財政は悪化し、行政組織は東部地域一体とした体制が整備されていることでしょう。
(2) 財政再建、小さな政府の実現
今、国も地方も財政再建、小さな政府を目指して行財政改革に懸命に取り組んでおります。特に公共事業は大幅に縮小せざるを得ず、無駄な公共事業はやらないと与野党とも主張しております。公共事業の先行き、あり方についてどう考えるか。公共事業予算は、今年も軽減されて最盛期の半分以下になっており、さらに縮小されることは必至であります。たとえ、鉄道高架化に予算措置が行われるとしても、当初の予定通りに予算が付くことはないでしょう。公共事業が半分に縮小すれば、事業期間は2倍に延びることになり、この事業は40年掛かる計算になります。沼津駅周辺鉄道高架化事業には、20年間でおよそ2000億円、年間100億円の財政支出が必要になるといわれていますが、今の情勢からこの予算が安定的に支出されるとは思えません。 途中で挫折することになりはしないかと心配になります。
(3) 何のため誰のための事業か、都市再生のあり方
残念ながら沼津市もご他聞にもれず、本町,上土など中心市街地の衰退は深刻であり、空き地が広がり、集客は減少し、シャッター街とも言われ、中心市街地の活性化が求められていますが、思うに任せないようです。住民の意識も低く、活性化の知恵はないようです。時代の転換もあって、国においても中心市街地の活性化対策は重要な政策課題となっておりますが、将来の中心市街地の活性化にとって必要な対策、インフラ整備は何でしょうか、どういう事業にプライオリティーがあると考えるでしょうか。肝心の沼津駅周辺鉄道高架化事業は中心市街地の活性化に役立つのでしょうか。沼津市の衰退の原因は一つ鉄道で分断されているからでしょうか、今、国は都心再生の政策に転換しようとしています。20年先、30年先の沼津市のために何が必要でしょうか。
そもそもこの事業は静岡県が事業主体であり、沼津市役所は全体計画の一部分を実施する補助的な役割に過ぎません。鉄道高架化事業に関連してJR貨物会社という民営事業の鉄道施設に対する補償措置としての貨物駅、操車場の用地買収すること、その費用を負担することという役割であり、鉄道高架化事業の施行の主体は県であり、その用地買収は本来県の権限義務のはずです。貨物駅、操車場の移転のための用地は、高架化事業の補償措置であり、事業主体ではない沼津市役所が土地収用法による強制収用は出来ないものですし、強制収用が出来るとしても静岡県が行うものであり、本来的にはJR貨物会社の役割なのです。最終的には強制買収が出来なければこの事業は成立しないのです。
将来の経済社会を見ても、鉄道交通が今以上に増えることはありえませんし、30年先に鉄道貨物輸送がどう役割を持つのかも不透明です。東京の中心でも汐留、飯田橋の鉄道施設は廃止されています。貨物輸送の将来がどうなるのか、鉄道高架化に伴う貨物駅の整備、操車場の整備がどう役立つのか、今の利用状況と比較してみることも必要でしょう。計画の必要性、妥当性について専門家、JR貨物当局に十分聞いてみる必要があります。
その効果に、14ヘクタールの土地が生まれ、4.7ヘクタールの高架下の土地が生まれる、商業施設や事務所などに利用されることによる効果を上げていますが、人口縮小、低成長化で今以上に土地が必要になるはずはなく、高架下の狭い土地の利用可能性も疑問ですし、将来の需要が増えない中で土地利用を広げることは、それだけ中心市街地の土地利用の可能性が減ってしまうことになりかねないと思います。どう使われるか方針も明確ではなく、費用対効果もはっきりしない土地利用に幻想を持つことが危険ではないかと思います。
(4) 費用効果分析の公表、負担する価値が明確か
小さな政府、効率的な自治体のためには、公共事業は、より役に立つ事業、より効果の大きい事業に投資が向かわなければならないと思います。沼津駅周辺鉄道高架化事業は、何のため、誰のための事業なのか、どのような効果があるのか、客観的、定量的な分析が必要です。公共事業には、費用対効果分析が必要不可欠でありますが、残念ながら沼津駅周辺鉄道高架化事業の費用対効果分析は十分に市民に知らされておりません。市の広報を見ますと、費用対効果は2.7で、完成後40年の便益を計算したといわれますが、残念ながらその計算根拠の経済成長、市財政、自動車交通量、事業波及効果などの数値はまったく分かりません。無駄な事業をやらないということは、費用対効果が低く、役に立たない事業をやらないということであり、投資に優先順序をつけることだと思います。沼津市当局は、市民に沼津駅周辺鉄道高架化事業の詳細な費用対効果を示す必要があると思います。さらに、20年以上の長期の事業であれば、世代間の費用便益の比較も考えなくてはなりません。情報公開のポイントはそこにあります。肝心のことは、2000億円を20年間続けて投資する価値があるのか、市民の負担はどうなるのか、負担に見合った受益が得られるかが問題です。
(5) 望ましい南北交通の円滑化事業、最小の費用で最大の効果を
大都市での踏切事故、人身事故が毎月のように報じられていますが、適切な資源配分として、沼津駅周辺鉄道高架化事業と大都市の踏切対策、高架化事業とどちらを優先させるべきでしょうか。小田急線の高架化事業を見ても、沼津駅高架化事業と比較しても、その経済効果には10倍以上の差があります。沼津市の都市形成の問題点だとする南北交通の円滑化、市街地の分断を解決するには、どのような事業がいいのか、最も少ない費用で最も効果が大きい計画、事業は何なのか、市民の理解を深めるためにも、鉄道高架化事業にこだわらず、沼津駅の橋上施設計画や沼津駅屋上広場計画などについて、その費用対効果、利害得失など市民からの提案を含めてもう一度幅広く検討すべきだと思います。そもそも、鉄道高架化事業の成果は完全に高架化が完成して、線路の切り替えが出来なければ生じないものであり、20年、30年の長期にわたって、ただ工事が進んでいるだけでは南北問題は解決しません。橋上駅、橋上広場のような、もっと現実的な対応を考えて、事情の変化に応じて事業を追加していくような弾力的な対応が求められるでしょう。
(6) 民主主義、市民の民度を計る試金石、政争の道具にしてはいけない
住民投票は、沼津市民の民主主義の発揮と行政の情報公開、透明性を確保する試金石であったと思いますが,本質論が不在のままに、市議会においても必要な論議が見えないままに、対立だけに終わってしまったのは実に残念でした。いたずらに賛成派、反対派とも感情的で不毛の対立をせず、真の市民の利益を考えて、行政、市民が一体になって望ましい沼津駅周辺鉄道高架化事業のあり方の論議を尽くすべきものと思います。これだけの事業に時間を惜しむべきではありません。市にとってやるべきことは、市民の声に耳を傾け、論議を進める機会を作ることであり、費用対効果など情報をもっと広く公開して、市民の理解を得ることです。16年前に決めた規定路線だといたずらに事業を急ぐことではないでしょう。 住民運動は政争の道具にしない、住民の市民意識を高めることと理解しておりますが、聞くところではこの動きが住民投票運動から沼津市長のリコール運動に至るということですが、リコールはその後の対応が明確でなければ市民の理解が得られないでしょうし、実際は政争そのものになると思います。今大切なことは、この事業の意義、問題点をもっと明確に論議し、市民の負担と受益の関係について市民の理解を深めることであり、さらにマスメディアの働きにも期待して、市民の論議を深める運動に向かうことだと思います。そのためには、事業主体である静岡県の事業の説明、情報公開を求め、周辺市町の理事者や市民の見方評価を知り、さらに地元選出の国会議員さんたちの論議への参加を求め、意見を聞いてみることでないでしょうか。適切な世論の形成こそ、このような運動の最大の目的だと思います。事業を考え直す機会を作るには、都市計画への行政訴訟、用地買収の妥当性の訴訟などの手段があります。
長谷川 徳之輔 明海大学不動産学部教授 1936年沼津生まれ、沼津東高卒業 1955年まで沼津暮らし、以来50年東京暮らし、大学が終わったら帰省したい、沼津市民に回帰、建設省、建設経済研究所を経て明海大学へ 斉藤さん、桜田さんの建設省の先輩ですが、市政には、まったくの公平な、ボランティヤーの立場
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