提言2

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沼津駅鉄道高架化事業再論      長谷川 徳之輔

「沼津市の未来という観点から、事業を見つめなおしてください。」「鉄道を高架化しないと新しい街づくりの課題が解決しません。」というパンフレットを手にしました。発行主体が誰なのか明示されていませんが、市役所の刊行物だろうと思います。広報活動を行うことはいいことですし、行政が、情報公開をして、計画への賛同を求める意欲は理解いたします。しかし、パンフレットの内容の精度や市民からの提案への問題点の指摘には、十分な理解が得られません。2,3お尋ねしたいと思います。

1 高架化事業の只の技術的な事業説明書ではなく、沼津市の将来計画の中でどういう位置づけになるのか、そのために高架化事業が不可欠であることの沼津市当局の見解、方針であることを市長自らの筆で訴えることが必要だと思います。

2 市当局が説明すべき最大の問題点は、この事業が2000億円の費用が必要であるとのことですが、それを支出する価値があるかどうかです。費用を市民でなく、誰かが負担してくれるなら、大いにやったらいいでしょう。市民の将来の負担になるから問題なのです。これからの事業費が1740億円、うち沼津市の負担が625億円とありますが、それだけの費用を負担する高架化計画の効果が、説明どおり実現されるのかを数量的に示すことが必要です。大規模な事業の投資決定には、コストベネフィットアナリシス、費用対効果分析が求められます。新しい道路が出来て交通難が改良されるなら、その効果はいくらなのか、新しい土地が生まれるならそれがどのように使えて、その便益がいくらなのか、災害防止効果が、いくらなのか、国の支援で沼津に投資される事業費が、沼津市の財政や市民の所得にどのくらい寄与するのか、その具体的な数値の説明が必要です。沼津市は国、県から高架化事業の費用対効果分析をすることが指示されており、費用対効果分析をしたものがあると伺っております。どうしてそれをパンフレットに掲載しないのでしょうか。

3 高度経済成長が続き、税収が伸び、財政にゆとりがあって、市民が事業を推進することを望む時代であれば、大いにやってしかるべきでしょう。人口が減少し、経済が低成長になり、地方自治体の財政悪化が深刻になる今、あえて事業を進めるのであれば、沼津市の財政の将来の見通し、世代間の便益と負担を明確に示すことが必要ではないでしょうか。

4 鉄道高架化事業の中身を見ると、高架化事業は823億円で全体の47%であり、53%が鉄道高架化をするために関連して必要になる事業費です。とくに、原西部地区の新貨物駅(101億円)、片浜地区の新車両基地(108億円)は、鉄道高架化がなければまったく必要のない事業ですし、今の貨物駅の稼働状況を見ても、20年先にこのような施設が有効に使われるのかどうかも分かりません。さらに、この事業の費用は、大部分沼津市が単独で負担する費用、鉄道高架化事業の補償費なのです。本来の事業主体の国や県が負担すべきものを受益者として沼津市が負担することに決められているものです。喜ぶのは、沼津市民の負担で20年、仕事を続けられるJRの土木屋さんだけです。

5 鉄道高架化事業は、全国で行われておりますが、中心は東京、大阪など大都市の通勤用の鉄道線路ですし、最近では東武鉄道の開かずの踏切で人身事故が発生して、その対策が急務だと指摘されております。小田急線、東武線、西武線、京王線などでは、1分間に1列車の電車が行き来し、踏み切りは60分のうち50分が閉まっている状況です。 沼津駅高架化事業では、13箇所の踏み切りは解消されますが、通過する車両は往復で10分に1本ぐらいでしょう。60分に50分は空いています。10キロの高架化が進む小田急線の沿線には200万人が住んでいます。沼津は21万人です。費用は両方とも2000億円です。その効果には、10倍の差があり、一人当たり負担にも10倍の差があります。どちらを優先すべきは明らかなのです。国の財政はますますきつくなり、全国にばら撒く政策は採れず、優先度の高い投資にシフトしていくことは必至です。鉄道高架化事業自体が、立体化工事を進めるだけでなく、踏み切りの改良、合理化、効率化で進めようとしています。いずれ、沼津駅の高架化は、国から見離される恐れもあるでしょう。 

6 小田急線の高架化に沼津市に投入される費用を回したほうが沼津市にとっても都市開発の効果が、より発揮されるでしょう。あさぎりが生まれて10数年経つでしょうか今も相変わらず1日4本した運行されていません。小田急線の複々線、高架化が進まないからです。完成して一日10数本のあさぎりが運行されれば新幹線より利用は増すかもしれません。沼津市が、東京圏の西の拠点都市になるのです。でも、小田急線でも地下化が完成するまでに、後数年掛かるそうです。早く完成することを国に求めたほうが、沼津市の都市開発にとってより効果があると思いますね。

7 パンフレットでは、鉄道高架化の最大の効果として、鉄道跡地が14ヘクタール、高架下が4.7ヘクタールの新たな土地を創出して、これが都市開発に役立つことが上げられています。どこの鉄道高架化を見ても、新橋、有楽町あたりの高架下はそれなりに使われていますが、大部分はせいぜい駐車場に使われている程度で、商店街など生まれるはずもないと思います。道路の高架下にしても大部分は駐車場に使われているだけです。人口が減少し、売り上げの伸びない沼津市にあわせて18.7ヘクタール土地が生まれたら、具体的に何に使われるのか、知りたいものです。

8 そもそも、沼津市の駅南の旧市街地の空洞化、衰退はひどいものです。本町、町方町もシャッター街、人通りも少なく、寂しい限りです。下本町、上土町にも膨大な空き地が使われないままに放置されています。沼津市の人口が増えることはなく、商店街の売り上げが増加することも今のままでは不可能でしょう。空き地は永遠に使われないかもしれません。それに加えて、鉄道高架化によって創出された土地の利用価値があるのでしょうか。万が一、うまく使われるとしても、それだけ中心市街地の衰退が進んでしまうのではないかと心配されます。まず、中心市街地の空き地をどうして有効に利用するのか、そのために費用をかけるのが先のように思えます。

8 市民から橋上駅の提案も出ていますが、それなりの効果があると思います。沼津駅前広場が、南北に分かれてつながりがないことが、駅周辺の衰退の一因でもあるでしょう。橋上駅で一体化して自由に往復できれば、南北の交流も交通も、もっと活発になるのではないでしょうか。技術的な些細な問題点を指摘するのではなく、どうしたらその問題点が解消できるのかを考えるのが、市当局の技術者の存在意義ではないでしょうか。

9 そもそも、鉄道線路の地下化など小田急線でも大変な論争になっています。膨大なコストがかかるのは自明の理、橋上駅と一緒に計画の是非を論議するのが間違いです。それよりも、東駿河湾の広域都市計画があるのに、町が東西に分断されて、中心の広小路さえ踏切が交通を阻害している三島市の伊豆箱根鉄道の高架化をしないで、膨大な費用がかかる沼津駅周辺の高架化を進めるのか、理解に苦しみます。広域都市計画であれば、新幹線三島駅の駅前広場の整備、広小路周辺の立体化こそ優先させるべきではないでしょうか。それが、沼津市三島市の一体化の助けになるのではないかとひそかに思います。